星田の森の奥にある『翁再生硝子工房』~ガラスが再生されて素晴らしい作品が生まれるところ~
…の、奥の奥のほうに、ひっそりと佇む工房。
懐かしいような、凛としていて温かみのあるガラスの器やオブジェ。
「見たことある!」という方も多いはず。
そうです、『翁再生硝子工房』さんです!
今回はこちらの工房におじゃましてきました!!
ご主人・森岡英世さんと、奥さま・菅深雪さんのお二人で制作をされている「翁再生硝子工房」。
大学などでガラス工芸を学ばれた後、個人でガラス作家として活動され、二人で「翁再生硝子工房」としての活動を開始。
門真市リサイクルプラザに設置されたガラス工房でのスタッフ経験などを積まれ、2011年の春に交野市内に工房を設立されました。
毎年10月に行われる「交野クラフト展」や、初夏と秋に行われる「木漏れ日市」の実行委員もされていて、ものづくりの楽しさ・手作りのもののよさを発信する活動にも力を注いでおられます。
「再生硝子」という名前からもお分かりのとおり、原料として使用されているのは調味料やお酒などに使われる「ワンウェイびん」というびんから作られる「リサイクルガラス」。
一度使用されたびん達をいったんガラスに戻し、再び「器」として新たな命を吹き込む…そんなお仕事をされています。
作品展示室は、現在準備中とのことで、居住も兼ねておられるため、まだ外観などはお見せできませんが、そのお仕事の現場を特別に見学させていただけることになりました。
今回制作される器はこちら!
ころんとした形の、翁さん特有のなみなみ模様のフリーカップです。
いざ、見学です!!
まずは、窯です。
3つの穴がそれぞれ別の役割をしています。
上の中央の穴は、作品の成型時にガラスを温める空間。
左下は透明ガラス、右下には色ガラスがそれぞれ壺の中で溶けた状態で入っています。
中の温度はおそらく1200度くらいです。
まずは、左の穴から透明のガラスの「もと」を吹き棒に定着させます。
いつもはほんわかした雰囲気の森岡さん。
ですが、作業が始まるとともにぴりっとした空気が伝わってきます。
ガラスは外気ですぐに硬くなるので、温めながら作業します。
温めたガラスを型に入れ、空気を吹き込みます。
型に入れることにより、側面が波打った模様になります。
再び温めた後
吹き棒を転がしながら、様々な道具で少しずつ広げていきます。
この風景、テレビとかで見たことがある!
でも、仕事が早すぎて重要なところがまったく撮れません!
(腕が完全にかぶってます…焦る)
再び窯で温めます。
おそらく棒や、ガラスの中の空気の温度が上がっているのだと思います。
危険回避のため、息を吹き込むのに長い管が使われ始めました。
空気を吹き込みながら形成しては、窯で温め…を何度も何度も繰り返します。
この形になったところで…
新たな棒に再び透明のガラスの「もと」をくっつけて
先ほど作り上げた器の口に、くっつけます。
接着した右の部分が、カップの「底」となります。
そして、もともと初めにくっつけていた部分(左の棒の接着部分)が切り取られました!
(…ですが、作業が早すぎて撮影できませんでした!)
先ほど切った切り口を温め
形を整えていきます。
さまざまな工具が使われます。
この間にも、温め→形成→温め→形成を何度も繰り返します。
そして、今度は右の窯から、色つきのガラスの「もと」を
飲み口まわりにくっつけていきます。
口元をほんの少しずつ、広げていきます。
工具とガラスが接触して、火花がちりちりと飛んでいます。
何度も何度もくりかえし…
できた!!!
と思った瞬間、すぐに別の作業台へ。
いつのまにか棒が外され
裏の切断部分をバーナーでなめらかに溶かし…
窯からの空気が流れ込み、約600度に熱せられた窯に入れられました。
ここでしばらく安定させるそうです。
スタートから終わりまで、息つく暇もなく、一連の作業が行われました。
その間、10分~15分くらいだったでしょうか。
時間の流れも忘れてしまうほどでした。
ガラスや窯はとてつもなく高温のため、火傷などの危険が及びます。
重たい棒がブレないように一定に保つ体力やバランス感覚も必要で、はじめから終わりまで一時も息抜く暇もなく、大変な集中力を要するのだろうと思いました。
また、ガラスを何度も温めながら少しずつ形成していくという工程は忍耐強さも必要で、完成品の軽やかでしとやかな印象とは裏腹に、とても大変な作業なんだなぁ…と、ただひたすら感動してしまいました。
今回は、カップの形でしたが、ワイングラスのような「足つき」のものになると、「本体」「足」「底」の3つのパーツに分けて制作した後、接合していくため、より大変だそうです。
工房の温度は36度。
夏場は50度を超え、測定不能になるんだとか…。
繊細で美しい作品の裏側には、火を操り、ガラスを操るという熟練した職人技が隠されていることを改めて知ることができました。
目指しているもの、作りたいものは「今つくっているモノ」。
制作の際に心がけていることは「常に同じクオリティでものをつくる」ということ。
手作りだからと不均一でよいというわけではなく、いつもスケール(定規)を手に、ひとつひとつ完璧な形を目指しておられます。
ものづくりにおける信念は、
「再生硝子の制約に、縛られること」
工芸用に調合されたガラス原料と比較して、再生硝子は色味や、技法や技術が限られています。
そんな限られた世界の中で、どれだけの可能性を広げることができるのかを日々考え、制作されています。
そんな翁さん、実は今、大阪の南堀江で特別展示をされています!
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NIPPON VISION MARKET「翁再生硝子工房のコップ」
場所:D&DEPARTMENT OSAKA
会期:2016年1月19日(火)まで
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普段の暮らしに当たり前に溶け込んでいるガラスのコップ。
過去に制作されていた「スタッキンググラス」を復刻し、100個の作品が制作順にナンバリングされ、展示されているそうです。
作り始めのNo.1から、最後のNo.100までの手吹きならではの個体の差、経過を観ることができるようなかっこいい展示になっているそうです。
そして、これに伴い、「日本各地の手仕事・地場産業の裏バイヤー」としてたくさんの企画展や書籍を出版されている日野明子さんとのトークイベントも予定されているそうです!
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「わかりやすい台所道具のお手入れ術」ガラス編
日野明子×森岡英世(翁再生硝子工房)
場所:D&D DEPARTMENT OSAKA
日時:2016年1月17日(日)14:00~15:30
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交野の地から、各方面でものづくりのよさを発信し続けておられる翁再生硝子工房の森岡さん・菅さんご夫妻。
これからのご活躍がますます楽しみですね!!!
*作品が気になる!という方は…
翁再生硝子工房HP http://www.k4.dion.ne.jp/~okina-gl/からお問い合わせくださいませ☆
交野タイムズ@ひふみ