営業許可取消訴訟、交野市地域住民が逆転敗訴

大阪高裁は8月30日、大阪府交野市でのパチンコ店営業許可取り消しをめぐる「営業許可処分取消等控訴事件」について、原告(住民)の訴えを棄却した。判決の根拠は「原告適格を有さない」。裁判長が主文を簡潔に伝え、詳細は判決文参照と、ほんの数分で終了した。
当日は、原告の住民や交野市議なども傍聴に訪れていたが、同判決に驚きを隠せずにいた。
この裁判は2009年、大阪府交野市でパチンコホールが出店を計画したことに端を発する。
近隣住民が店舗の駐車場などが小学校から100メートル以内にあり、府条例に違反するとして、営業許可の取り消しなどを求めて大阪府を提訴。昨年11月27日には大阪地裁が住民の訴えを認め、大阪府に営業許可の取り消しを命じた。この判決を不服として大阪府が控訴。今回の高裁判決を見るに至った。
高裁における裁判の争点は、(1)原告適格が認められるか(本案前の争点)(2)被控訴人らが主張する違法事由は行政事件訴訟法第10条1項による主張制限を受けるか(本案の争点1)(3)本件営業許可処分について取消事由はあるか(本案の争点2)。
高裁の判決で焦点となった(1)「原告適格の有無」に関し、控訴人(大阪府)は、近隣住民としての原告適格について、1998年の最高裁判決(最高裁平成10年12月17日第1小法廷判決)を引用し、風営法4条2項2号が「当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは言い難い」と解釈したことから、近隣住民は処分取消訴訟についての原告適格を有しないと主張。さらに、保護者としての原告適格についても、同最判を根拠に「個別的利益保護の対象として原告適格を認められるのは距離制限対象施設の設置者に限られる」「不特定多数人であって間接的な利益を有するに過ぎない距離制限対象施設の利用者にまで原告適格を認める必要はない」との見解を示した。
高裁の判断も、この争点(1)について「行政事件訴訟法9条1項、2項の見地に立ち、近隣住民として騒音・振動規制を根拠として風俗営業許可の取り消しを求める原告適格を有するが、陳情内容を見る限り業許可取消事由とはならない」と判断。また、保護者としての原告適格については、94年の最判を受けて「施設の設置者は原告適格を有する」が「距離制限対象施設の利用者は距離制限違反を根拠として営業許可処分の取り消しを求める原告適格を有しない」とし「全員原告適格なし」とした。